If You Want To Feel The Same I Do

ジャニ / 2.5 / 病んでるからで許してくれ

砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない___感想

 

(少々ネタバレがあります)

 

 

読もう読もうと思ってなかなか読めずにいた本をようやく読めた。

桜庭一樹著、「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」

 

 その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日–––––––

直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。

(角川文庫版あらすじ)

 

 

 

というあらすじなのだが、タイトルの砂糖菓子の弾丸、とはヒロインの一人である海野藻屑(すごい名前である)が撃ちまくっているもの。あらすじ通り、家の事情からお金という実弾がほしくてほしくてたまらない主人公のなぎさには苛だたしい弾丸だ。体内で溶けてしまう、現実には通用しない甘ったるい弾丸。

その弾丸を作中で撃ちまくる藻屑は孤独だった。

かえってくることのない親からの愛情がくることに縋り暴力を愛情と思いそれに依存している藻屑。漁師だった父を海で喪い、引きこもりの兄がいる自分の家庭がなんて不幸なんだと自分を慰めながら実弾を求めているなぎさ。

二人とも、不幸に依存している。それに依存することで何とか生きている。そして、藻屑はついに殺されてしまった。

だが、藻屑が死んでしまい、それをなぎさが見つけるということは物語の始まりで提示されている。だからこそこの物語は狂おしいほどまでに切なく残酷なのだ。

 

最初から海野藻屑という嘘つきで残酷な転校生が死んでしまうと分かっていながら惹かれた。死ななければいい、父親に殺されなければいい。でも、どう足掻いたところで藻屑がバラバラ死体となって死んでしまうことも変わらないしそれを藻屑のたった一人の友人であるなぎさが見つけてしまう運命は変わらない。絶対に変わらない。最期のとき、藻屑は“瞳を見開いて、怯えているようなあきらめているような悲しい表情のままで時が止まっていた”。

自分のことを痛めつけ、虐待する父親をそれでも「大好き」と言う藻屑はたぶん気づいていた。ほしくてたまらない愛情がかえってこないことを。だから、「好きって絶望だよね」と口にした。

 

歪んだ愛情の証である痣だらけになった少女は死んでしまった。愛していた親に殺されても、藻屑はきっと可哀想ではなかった。きっと、そんな単純な言葉じゃない。

 

 

 短めのお話なので、残酷な青春を読みたい方はぜひ読んでほしい。この桜庭一樹の青春は、少女漫画のような甘ったるい砂糖菓子ではない。